上野のパンダは「レンタル」なのか

世間の人は、上野動物園のパンダが「レンタル」されていると考えているようです。そのことは、Googleで「上野動物園 パンダ レンタル」というキーワードで検索した結果を見ると分かります。ヒットするページは個人のブログだったり、プロが運営しているニュースサイトだったりしますが、皆さん「レンタル」というのはどこから知ったのでしょうか? 少なくとも、東京都と上野動物園が公式にリリースする文書で「レンタル」という表現を見たことはありません。
たとえば、2010年7月にジャイアントパンダ借り受けが正式に決まった(ジャイアントパンダ保護研究実施の協力協定書に調印した)ときの東京都の報道発表資料(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/07/20k7q300.htm)には金銭についての言及はなく、リーリーとシンシンの来日日程が決定したときの発表(http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/02/20l2h500.htm)についても同様です。もっとも、文書では明示していなくても、都知事が記者会見で「高い買い物」と発言していますから(http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/TEXT/2010/100723.htm)、こういうところから、借り受けが有償であることが広く知られるようになったのでしょう。
問題は、「レンタル」という言葉の意味です。「有償借り受け」よりも言いやすいし印象に残りやすいので、このカタカナ語が広まったのだと私は推測しますが、これと同時に「パンダはお金を出せば借りられる」というイメージが広がったような気がします。その現れの一つが仙台市のパンダ誘致です。来年度にもパンダ導入と意気込んでいたようですが、そうそううまく事が運ぶわけでもなさそうです(ちなみに私は仙台市のパンダ誘致には反対ですが、理由はここでは省略します)。
あと、ジャイアントパンダに関して「レンタル」という言葉を使いたがる人は、ネガティブなことを言おうとしている傾向があるように思います。それか、中国からの贈呈ではなくてレンタルだということを知っているとひけらかしたいか。要するに「レンタル」と言いたいだけなのかもしれませんが、いつだったか、自称パンダ好きという人が「レンタル」発言をしているのを聞いて悲しくなりました。「レンタル」だから日本にずっといるわけではない……だから何だというのでしょう。そういう契約でしか日本に来られなくなった事情について、もっと考えて発言してほしいと思いました。
一般人が「レンタル」というカタカナ語を使うのは仕方ないとして、マスメディアまでそれに同調してほしくありません。リンリンのような「贈呈」されたパンダと違うと言いたいのであれば、「ジャイアントパンダ保護研究のために借り受けている」と表現してほしい。長すぎるというのならば「ブリーディングローン」という言葉があります。確かアドベンチャーワールドではこの表現を使っていたはずです。