中国のパンダ貸し出しは「ビジネス」なのか

最近、ジャイアントパンダがニュースで取り上げられるたびに、ニュースサイトやYahoo!などのポータルサイトでコメントが寄せられて、その中によく「中国はパンダで儲けて」云々というフレーズが登場します。ああいうコメントやツイートがそのまま日本国民の世論を表しているとは思いませんが、世間にはそういう見方をしてる人がいるというのは確かです。
で、中国はパンダを外国に貸し出して儲けているのでしょうか。上野のリーリーとシンシンも、借りている間は毎年いくらかを中国側に払うことになっているそうですが、それは見世物を借りるためのレンタル料ではなく、中国のパンダ保護活動を支援するためのお金のはずです。
東京都が実際にいくら払っているかは知りませんが、“相場”のとおり年間100万米ドルだとすると、「ビジネス」にしては金額が小さいと思います。また、儲けたいと思っているにしては、貸し出しまでの時間がかかりすぎです。上野の場合は、2008年に新しいペアの貸し出しの話が出て、実際に来日したのは2011年です。仙台市の誘致にしても、最初のころ無償で借りたいと言っていたのは論外ですが(パンダ保護に協力したくないけど貸してほしいというのは虫が良すぎ)、資金のめどがついたと連絡したら、普通の商売だったらセールスマンがカタログを持ってすっ飛んできそうなものです。
実際、中国のパンダ保護活動にはお金がかかっているはずです。リーリーとシンシンが生まれ育った保護センターの維持に加え、野生パンダ生息地の保全という活動にも資金が必要です。上野動物園以外にも、パンダを借りている動物園は10か所以上ありますが、年間10億円程度では、必要な資金の一部でしかないはずです。
何度も「はず」と書いているように、私の立場では伝聞をもとに推測するしかありませんので、ここは上野動物園からきっちり説明してもらえるとよいのですが、中国の保護センターのことは、http://www.ueno-panda.jp/approach/にちょっと書かれているだけなんですよね。

中国パンダ保護研究センターは、野生パンダ本来の生息地に立地する中国最大のパンダ保護区である中国四川省臥龍自然保護区に、パンダの保護研究活動の拠点として設立された施設です。これまで多くのパンダ繁殖研究実績があり、海外の動物園とパンダの飼育繁殖に関する共同研究にも積極的に取り組んでいます。

とのことですが、写真は臥龍ではなく雅安のセンターのものだし。臥龍にあった施設は、2008年の大地震で壊滅的なダメージを受けてしまい、別の場所に再建中です。
いずれにしましても、払う方にとっては100万ドルという金額は決して小さいものではありませんので、東京都と上野動物園は、それが有益に使われていることをもっと世間に知らせてほしいと思います。「客寄せパンダのために大金を払ってバカバカしい」という、日本国民の文化レベルが疑われるようなコメントを何度も見たくありませんので。