寄付の意味

日経ビジネスオンラインに“「ファンドレイザー」というお仕事”という記事が掲載されていました(http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120821/235852/)。アメリカなどでは、動物園の運営資金もかなりの部分を寄付に依存しているというのは知っていましたが、NPOの資金を集めてくるfundraiserという職種があるのは知りませんでした。印象に残った部分を引用します。

彼女の発言で興味深かったのは、「『お金をください、お願いします』(というスタンス)では続かない」という指摘だ。NPOは富裕層から寄付金を受け取るが、それは一方的な“施し”ではない。忙しい彼らは社会貢献を代行してもらうことで満足感も得られる。心の底から活動を応援したいと思わねば、いくらお金があっても持続的に支援する気にはならないだろう。

この記事を読んで思い出したのは、上野動物園の「ジャイアントパンダ保護サポート基金」(http://www.ueno-panda.jp/support/)のことです。上記引用部分の「彼女」は、アメリカでファンドレイザーとして働いた経験があり、現在はフリーランスとして活動なさっている方のことですが、「ジャイアントパンダ保護サポート基金」はまさに、「お金をください、お願いします」と言っているだけに見えます。動物園内の募金箱の横に、募金の趣旨を記したポスターがありますが、貼られている場所が見えにくいうえに内容が抽象的です。なぜ支援が必要なのかが伝わってこない。

上野動物園の展示ではわかりにくいかもしれませんが、ジャイアントパンダ絶滅危惧種です。野生の個体数は1,600頭程度といわれており、放っておいてたらいつか絶滅してしまうかもしれません。それを防ぐために中国はいろいろな取り組みをしており、それに東京都と上野動物園も協力しているということになっているはずです。そのことを、なぜもっと具体的にアピールしないのか不思議に思います。特に、海外の動物園を見てきた後では。

おそらく、上野動物園は寄付金に頼らなくても運営が成り立つので「ジャイアントパンダ保護サポート基金」への寄付の呼びかけにそれほど熱心ではないのだと思いますが、金額の問題ではなくて、寄付文化を広げるきっかけにしないのはもったいないと思います。ディープなパンダファンは、中国のパンダの里親になったり、臥龍や碧峰峡のセンターでボランティア労働をしたりという形で保護に協力しているそうですが、そこまでいかないライトなパンダファンにも、パンダを絶滅から救いたいという気持ちを行動に移したいと思う人はいるはずです。