音声だけで情報を伝達できますか?

三連休の初日と3日目に上野のパンダを見に行ってきました。連休なのである程度の混雑は覚悟していましたが、例のアナウンスはやはりうるさかった。以前、上野動物園に「もっと静かに観覧させてほしい」という意見を送ったこともありますが、静かになるどころかエスカレートしています。ピーク時には拡声器3台が同時にしゃべってますからね。そうなると、騒音でしかありません。パンダが展示室に移動したあとは、リーリーが2つの部屋を行き来するたびに「手前の部屋に移動しました」「3番目の部屋に移動しました」と実況する始末です。見ればわかるのに。最初は辟易しましたが、そのうち、こんな非効率的なことをいつまで続けるのだろうかと観察する余裕さえ生まれてきました。
まず、展示室の手前に立っている警備員が「パンダは屋外の運動場にいます」とアナウンスしています。そのために一人立たせておくこともないと思いますが。「屋外にいます」と立て札を立てておけば済むことです。アドベンチャーワールドのように、見取り図に個体名も記しておけば「こちらは雌のシンシンです。奥の運動場には雄のリーリーがいます」とうるさく連呼することも不要になるはずです。

「カメラのフラッシュをオフにして」というアナウンスも相変わらずでした。だからパンダの前で設定のことを言っても遅いですってば。晴天の屋外で発光させてる人はそんなにいないと思いますが。発光させた人がいたとして、遠くから「ごめんなさいフラッシュは切ってください」とぬるく呼びかけても、本人は自分のことだと思わない可能性があります。
混んでいるので、「手すりの前で長時間の観覧はご遠慮ください」「歩きながら観覧してください」「一人の人が立ち止まってしまうと後ろの人が進めなくなってしまいます」というアナウンスがひっきりなしに行われていました。決まりきったアナウンスを繰り返すだけなら録音しておけばいいのに。人間がアナウンスしてもいいけれど、「警備」のほうは大丈夫でしょうか。アナウンスしている間はそちらに注意が向いてしまうと思いますが、 不審者がいたりした場合に摘発できるのでしょうか。
だいたい、上野動物園ジャイアントパンダ観覧のシステムは複雑すぎます。私は何度も行っているので勝手はわかっていますが、パンダを見るために訪れた人のすべてが、あのアナウンスを聞いて全部理解しているでしょうか。それは不可能です。日本語の話し言葉を理解できない人には、警備員が伝えようとしている情報は伝わりません。具体的にいえば外国人です。見るからに外国から来たとわかる西洋人やインド系の人のほかは全部日本人というわけではなく、話し声を聞いていると、中国や台湾や香港やシンガポールやタイなどからの人もかなりいるように見受けられます。
もう一つ、「日本語の音声情報を理解できない人」のカテゴリーとしては、聴覚障害者があります。どちらも、拡声器で一生懸命「手すりの前では立ち止まらないで」とアナウンスしても伝わらないでしょう(同じグループ内に日本語の音声を理解できる人がいない限り)。それどころか、端から見れば、立ち止まるなと言われているのに立ち止まっている図々しい人に見えてしまうかもしれません。これは本人にとっても不名誉なことです。
日本語を理解できる健常者でも、たとえばグループのメンバーどうしで話しながら見ているようなときは、話し相手の声を聞くことが優先されるので、おそらくアナウンスはあまり耳に入りません、ですから、観覧システムをもっと単純にして、観覧ルールを入口の必ず目に付くところに、日本語と英語で、できれば他の言語でも掲示すればよいと思います。
それにしても、日本を代表する動物園なのに無駄だらけで外国人や障害者への配慮がないというのは、東京都としてはちょっとまずいのではないでしょうか。東京は2020年のオリンピック開催地として立候補していますが、オリンピックを見に来た人がついでに訪れるであろう上野動物園なのに、外国人客に心地よく観覧してもらう体制ができていないのですから。2020年までに何とかすればよいという問題ではありません。開催地が決定するのは今年です。こんなことでいいのか、都知事に聞いてみましょうか、それともIOCに直接報告してしまうか。
そんなことはともかくとして、私が望むのはただ、静かにパンダを見たい。それだけです。他の動物園ではできることがなぜ上野ではできないのか。不思議です。